これから4回に分けてメリーランド大学所蔵「プランゲ文庫」の過去と現在
について述べたいと思います。
占領期のビッグ・データ 「プランゲ文庫」 過去と現在
①: 黎明期
②: まず検閲関連研究から
③: マイクロ版とデータベース活用期
④: NPO法人発足ー「府県別コンソーシアム提案」
①: 黎明期
敗戦直後の1945-49年の間に発行された日本における雑誌、書籍、新聞などの全ての出版物は、GHQ(連合国軍総司令部)の検閲下におかれ、民間検閲局(CCD)の検閲を受け無ければ紙の支給が受けられないと言う状態から出発し約4年間続きました。占領期とは、一般的に1945年の敗戦から1952年サンフランシスコ講和条約締結までの7年間でありますが、その前半こそが占領期を特色づけするだけでなく、戦後から現在にいたる日本を決定する最重要の時期であると思います。
この検閲終了後、保管されていた検閲済みの出版物は、CCDに勤めていたゴードン・プランゲ博士を通して米国メリーランド(州立)大学へ寄贈されました。これがプランゲ文庫です。たとえば雑誌を見た場合、学術、文芸、風俗、教育、工業、医学等々の一般誌を網羅し、全国各地の企業の社内報や、青年団雑誌、労働組合機関誌、短歌や俳句の同人誌などの民衆のメディア迄も収録されておりました。所蔵タイトル数は1万3787誌、推定ページ数は610万頁、推定冊数15万冊にも上り、国立国会図書館の所蔵のものはその内の約20%しかない、つまり8割の雑誌はプランゲにあって、同館には1号もないといわれております。(国立国会図書館の創設は1948年で約3年間のブランクがあります)。雑誌の他に、新聞や単行本等々も含まれております。
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森園論文を読んで触発された方に、出版界の長老布川角左衛門氏がおり、プランゲ文庫を文化財として評価していたそうです。それ以前から占領期の研究をされていたグループに『展望』編集者の臼井吉美氏、『日本評論』編集長であった美作太郎氏等、実際にGHQの検閲を身をもって体験したことのある編集者達が、戦時下の軍部とGHQによる検閲との比較を論じていました。更に『改造』の編集者であった松浦総三氏はメリーランド大学まで出かけて『増補決定版 占領下の言論弾圧』を1974年に発表しております。 |
『戦後史研究会ニュース』
No.2(1973.1.12):「米の図書館に眠る、占領下日本の全出版物、貴重な資料もボロボロ」石松久幸(『読売』72/11/02
No.6(1973.4.11):福島鑄郎氏よりMaryland大学Prange Collection(East Asian Collection)所蔵の雑誌調査の計画が紹介された。6月中旬から約1週間の予定で調査に当たる予定である。
No.8(1973.10.11):福島鑄郎氏の訪米の報告を聞く。詳しくは『読書人1973.8.13』を参照。
No.10(1973.11.26): 福島鑄郎氏はMaryland大のEast Asian Collectionを日本人が利用する際の窓口のような仕事をしております。
No.35(1980.8.1):占領期の言論統制―滞米中の資料収集を中心として。古川純「私は去る5月中旬、2年間にわたる米国メリーランド州立大学での在外研究を終えて帰国した。—」
No.50(1983.5.1):帰朝・近況報告。高橋史朗「2年9ヶ月のアメリカ留学を終え、昨年末帰国致しました。アメリカではメリーランド大学と—–」。
No.54(1984.2.4):Eizaburo OKUIZUMI and F. Shulman, A Binational Project for the Preservation and Control of Censored Magazines from the Allied Occupation of Japan at the University of Maryland. 1983.7p
No.56(1984.6.1):高橋史朗「明星大学内に占領教育史研究センターが開設された。—」・研究発表「奥泉栄三郎:プランゲ・コレクションについて」・講演「F.J.シュルマン:米国における日本占領研究資料についてーメリーランド大学所蔵プランゲ文庫の紹介」・資料「占領下教育関係雑誌目次総覧・改題―メリーランド大学マッケルディン図書館所蔵」。
No.60(1985.2.1):「プランゲ・コレクション利用の著作目録:メリーランド大学の東亜図書部は、プランゲ・コレクション所蔵資料を利用した著作の文献目録を作成している—-」
No.73(1987.9.1):竹前栄治「日本国憲法の“原点”」去る4月25日、日本国憲法施行40周年を記念するシンポジウムがメリーランド大学で開催された。参加者は300名にのぼり、日米学者ら三人が基調報告を行うと共に、日本国憲法の起草に助力したアメリカ人(GHQ草案起草者)九人が興味深いエピソードを披露した。
No.74/76(1988.12.10):成田龍一「占領期神奈川県下新聞目録稿」『市史研究・よこはま』二号
No.78(1991.7.20):奥泉栄三郎「プランゲ文庫―負から正の文化遺産へ」『図書館雑誌』83巻8号(1989.8)
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