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布哇(ハワイ)貴重資料解説(19) 『布哇日本人発展写真帖』

2012年12月05日 · コメント(0) · 出版物, 古書

英文書名:Pictorial Book of the Development of Japanese in Hawaii

[小野寺徳治, 宮本銑太郎, 米倉弘編輯]

この種の写真帖は、ハワイにおける日本人の可能性を表象で以って説明したことに他ならない。簡潔なる写真説明は、日本人がすべての方面に如何に発展しつつあるかを確証してくれる。当時のメディアの中では贅沢とは云わないまでも豪華な出版物であった。そのため、発行側でも資金的に苦労が多く、寄付金募集の成否が鍵となるのが実態である。

その眼線でみると、「布哇日本人発展写真帖賛助者氏名(ABC)順」と「布哇発展写真帖賛助者氏名」(36-37頁)は多大の興趣を覚える。両者の氏名は殆んど重複しており、圧倒的にホノルル市在の名士である。ホノルル市以外ではヒロ市の数名を数えるに過ぎない。

昨今、日本からハワイに出かける人は少なくないが、その90%以上がハワイ=ホノルル市と思い込み、その周辺以外はほとんど知らないとも囁かれる。それと同じように、「布哇」と一口に云っても一定の基準で各島各地を描出しているわけではない。その点、報道の陰とも言われる処を見落としてはならない。

本書の編集方針の場合、ホノルル市内は「超名所・名士」の他は被写体のABC順、各島に至っては地名別とし、写真が原稿として本書編集部に到着した順で掲出している。 

この年鑑で角田柳作の動向を探ってみる。御大に今村恵猛総監をいただき、角田は布哇仏教青年会顧問・学務部々長・文書部々長の任にあった。同会は本願寺系の団体で会員数300名を擁し、月刊機関雑誌『同胞』を刊行中であった。金曜会では発起人12名の一人として活躍した。

この金曜会は、ハワイに寄港した著名な日本人に協力を求めて、在留民一般を対象に無料公開講演会を開催した。この活動は、盛会にして啓蒙的、意義のあるものだった。今その講演者をみると次の如くである。

新渡戸稲造(初回・日米交換教授・演題「上陸所感」)島田三郎(初回・代議士・平和運動のため渡米途上・演題「在留民諸氏に告ぐ」)幣原坦(文学博士)井上円了(文学博士)志賀重昴(早大教授・前後2回・招聘に応じ数回の講演・帰朝後布哇紹介に甚大の努力)河上清(英文『日米問題』著者)竹越與三郎(衆議院議員)嘉納治五郎(高等師範学校長)江原素六(貴族院議員)井深梶之助(神学博士)服部綾雄(政治家)添田寿一(法学博士)神谷忠雄(実業家)永瀧久吉(総領事)末廣重雄(法学博士)佐藤昌介(農学博士)姉崎正治(文学博士)一橋倭(スタンフォード大学講師)波多野傳四郎(牧師)綱島佳吉(牧師)神戸正雄(法学博士)海老名弾正(牧師)日置黙仙(曹洞宗名僧)小嶋久太(実業家)。

揮毫は澁澤榮一男爵、尾崎行雄司法大臣、武富時敏大蔵大臣、諸井六郎総領事、山脇春樹大博参事官が寄せ、序文は大隈重信総理大臣侯爵、栗津清亮法学博士、鶴島半蔵布哇新報社々長(元布哇日々新聞社々長)と続く。

この中で鶴島は本書の版権所有者兼発行者の米倉彦五郎と深い縁があった。米倉はかって鶴島の配下にあり、同紙の留学生として Natural History of Hawaii とあるから、大正5年にタイミング良く寄せたことになる。

hawai19

【文生書院:復刻版『初期在北米日本人の記録』に収録されています】

ISBN978-4-89253-394-5

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