この作品の紹介の前に前川千帆について少し説明致します。
1888-1960年の間に活躍した版画家・漫画家。京都生まれ。
1918年、読売新聞社に入り、漫画を描き続けます。しかし、その一方で、1919年(大正8)に、第1回日本創作版画協会展に「病める猫」のなどを出品して版画家としての活動を始めます。1922年(大正11)、日本創作版画協会会員となり。また文展、帝展、日展、春陽会展などにも出品しました。代表作に1941年(昭和16)に刊行された『日本浴泉譜』があります。
その前川千帆の代表作である『日本浴泉譜』を入荷しました。
昭16~34年に製作
表紙(題字)・見返し・扉も版画、毛筆署名入り
1冊に二十景の温泉・名所を多色刷木版画で紹介しています
有名温泉地の他に、湯治宿のマイナーな温泉地も取り上げていて、
昭和中期の温泉事情を垣間見ることができます。
1954年頃まで「朝の浴場」、「温泉宿」など
温泉や温泉場にこだわった作品を作り続けました。
作品の中の一つである梨木温泉は、今でも静かな一軒宿ですが、
「部屋部屋の鉄瓶が何百と廊下に並ぶという大所帯の宿。近在の湯治客
で賑うう。・・・開墾地に熊が出没するという 噂。・・・夏になると1000人
に近い客がきたらしい」
などが書かれていて、時代を映す資料としても貴重な作品になります。
今も残っている温泉地がほとんどですので、見比べてみたり、この風景を
版画にしたんだなと探してみるのも一つの楽しみかと思います。 (AO)
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